判例および行政解釈によれば、年次有給休暇を使用せず労働を提供した場合、使用者は未使用休暇日数について年次有給休暇労働対価を支払わなければならない。また、年次有給休暇が発生したにもかかわらず休暇を使用せずに退職した場合も、未使用の年次有給休暇日数に対する労働対価を支払わなければならない。年次有給休暇労働対価は、年次有給休暇請求権が消滅した時点で請求することができる。つまり、労働基準法第59条第7項は「年次有給休暇は1年間行使しないときは消滅する」と規定されているため、年次有給休暇を使用できる日から1年経過すると、それ以上休暇を請求することはできず、休暇請求権は対価請求権に転換されるものである。ただし、年次有給休暇を使用できなかったのが使用者の指示によるものであったり、休暇を請求したにもかかわらず付与しないなど使用者の帰責事由がある場合には、1年経過してもなお前年の年次有給休暇を請求することができる(労働基準法第59条第7項但し書き)。年次有給休暇労働対価は労働の対象として賃金に該当するため、その消滅時効は賃金債権と同様に3年である。因此、年次有給休暇を1年間使用しないことにより休暇請求権が消滅した翌日から3年以内に年次有給休暇労働対価を請求することができる。
厚生労働省の行政解釈によれば、労務管理の便宜上、就業規則や団体的協定により全労働者に対して一律に会計年度を基準として年次有給休暇を算定する場合、年次有給休暇労働対価請求権は年次有給休暇使用可能年度の翌年の翌年1月1日に発生すると見なされる。一方、年次有給休暇を使用しない状態で退職した場合に発生する年次有給休暇労働対価について、厚生労働省の行政解釈は、当該年度の年次有給休暇未使用日数を越える期間を労働して退職した場合、未使用休暇日数全部に相当する年次有給休暇労働対価を支払い、退職年度の年次有給休暇未使用日数に不足する期間を労働して退職した場合、休暇使用が可能であった労働日数に相当する年次有給休暇労働対価を支払わなければならないと述べている。つまり、1月1日に入社した労働者が退職前年度の欠勤なしにより20日の年次有給休暇を使用できる年について1月10日に退職した場合、退職年度の休暇使用可能日数である10日のうち、有給祝日や約定有給休日などを除き、実際に休暇使用が可能であった日数についてのみ年次有給休暇労働対価を支払わなければならないということである。ただし、大裁判所の判例は厚生労働省の解釈とは異なり、年次休暇使用可能日数と無関係に退職により使用できなくなった年次休暇日数全部について年次有給休暇労働対価を支払わなければならないと見ている。また、厚生労働省の行政解釈は、退職前年度に発生した年次有給休暇を未使用で労働して発生した対価は、その額の3/12を退職金算定のための平均賃金算定基準賃金に含むが、退職により新たに支払事由が発生した年次有給休暇労働対価(退職年度に発生した年次有給休暇を未使用としたことにより発生した年次休暇労働対価)は、退職金算定のための平均賃金算定基準賃金に含まれないと見ている。