労働契約を締結する際、使用者に対して経済的・社会的地位が低い労働者が不利を被らざるを得ないため、労働基準法は労働者が不利な立場で不当な労働契約を締結することを防止するために複数の保護規定を設けており、使用者の「労働条件明示義務」もその一つである。つまり、労働基準法上の「労働条件明示義務」によれば、使用者は労働契約を締結する際に労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明確に明示しなければならず、特に賃金の構成項目、計算方法及び支払方法に関する事項は書面で通知しなければならない。
このように使用者に労働条件明示義務を課す理由は、労働者が労働契約を締結する際に労働条件を知らないことにより予期せぬ不利な労働条件を甘受することを防止するためである。特に賃金をめぐる使用者と労働者の争いを防止し、後日の紛争解決の基準として使用するために、賃金の構成項目、計算方法及び支払方法に関する事項を書面で明示するよう定めている。したがって、時給算定方式、固定手当、休日・休暇手当、割増賃金の計算、賃金支払日、口座振込か現金支給か、月給か週給かは書面で労働者に提示されなければならない。
賃金関連事項以外に明示すべき労働条件は、就業規則に必ず記載されなければならない事項でもあるが、必ず書面で提示しなければならないものではない。使用者が労働条件明示義務を履行するために労働契約書に労働条件を具体的に明示して労働者に提示したとしても、実質的に弱者立場にある労働者が労働契約を締結する際に労働契約書を丹念に読み異議を申し立てるのは困難であるため、雑に署名して自分の労働条件が何かを知らないケースが多い。
特に使用者が提示し労働者が無意識に署名した労働契約書に「契約した賃金の中に労働基準法による時間外労働手当、夜間労働手当、休日労働手当などがすべて含まれている」という文言が含まれているという理由で労働者が法定手当を請求できない事例が多いため、労働契約を締結する際提示された賃金やその他の労働条件を丹念に確認して署名するだけでなく、労働者自身も労働契約書を保管しなければならない。